#005|変化が起きている時こそ、選択肢を見直すタイミング。 SOCIAL ENERGY 1周年対談
株式会社Next Commons Lab(以下「株NCL」)と株式会社イーネットワークシステムズ(以下「ENS」)が運営するSOCIAL ENERGYは、2021年3月のローンチ以来「毎日使う電気で地域を応援できる電力サービスプラットフォーム」として、共感してくれるローカルパートナーやユーザーを少しずつ増やしてきました。
「ユーザーが支払った電気代の一部が応援したい地域や団体の活動原資として寄付される」「実質CO2フリーで環境に優しい」「地域の電力会社よりも安価に使える」と良いことだらけのサービスですが、実際のイメージがわかない...という方も多いのではないでしょうか。改めてこの1年を振り返るとともに、SOCIAL ENERGYのこれからについて株NCL代表取締役・家冨と、ENS取締役・大澤の両名が対談を行いました。
家冨:今日はよろしくお願いします。サービスの前に、運営メンバーである我々のことを知らない方も多くいらっしゃると思うので、読んでくださっている方に向けてまずはお互い簡単に自己紹介しましょうか。
大澤:ENSの親会社である 三ッ輪ホールディングスグループ経営戦略本部で責任者を務めている大澤と申します。ITやコンサルでのキャリアを経て、6年前に三ッ輪ホールディングスグループに参画しました。
仲間と一緒においしい食事とお酒を楽しむことが人生の喜びです。小学生2人の父であり、犬と妻と一緒に日々楽しく騒がしく過ごしています。
家冨:私は株NCLのコミュニティマネージャーとして、大澤さんは株主として、株NCLに共感する仲間が全国から集まったタイミングが最初の出会いでしたね。
大澤:SOCIAL ENERGYは、個性豊かで多様なメンバーで運営しているところも面白さの一つかなと思います。家冨さんは特に面白い経歴といろんな顔を持っていますよね。
家冨:株NCLの代表取締役、家冨です。ストリートとギャルカルチャーの中で10代を過ごした元ガングロです。24歳の時、東日本大震災をきっかけに「暮らしや物事の源流を知りたい」という好奇心から生まれ育った関東を離れ、岩手県遠野市に移住しました。さまざまな地域での体験を経て、2016年にNCLを共同創業しました。個人では2017年にスナックを開店し、多様な人が交流できる酒場を経営するママでもあります。SOCIAL ENERGY以外には、NCLが運営するプラットフォームSustainable Innovation Labのコミュニティマネージャーも担当しています。社会学と民俗学とアートとコアラと旅とワインが好きです。
サービス開始から1年、改めて実感する「SOCIAL ENERGY」の魅力
家冨:SOCIAL ENERGYをローンチしてから1年と少し経ちますが、まずは率直に感想を聞かせてください。
大澤:手前味噌ですが、ごく簡単な切り替え手続きをするだけで自分の応援したい地域や団体を応援できるって、改めていいサービスだなと。もちろん、電気の品質もこれまでと変わりませんし。
家冨:大手から新電力への切り替えにあたって、やはり「切り替えの手間」と「電気の品質への心配」がネックになる方が多いみたいですね。
大澤:Webから申込するだけで完結するので、実は切り替えはとても簡単なんですよね。電気は同じ送配電網から供給されるので停電しやすくなったりすることはなく、これまでと同様の品質でお使いいただけます。さらに当社内の業務効率化によってコストを抑えているので、CO2フリーでありながら、電気料金は地域の電力会社よりも安価です。
家冨:オペレーションや煩雑な手続き関係などは全部ENSさんが巻き取ってくれるので、ローカルパートナーにとってもメリットしかないなと感じます。イニシャルコストゼロで電力事業をスタートできるので、自分たちの活動に共感してくれるユーザーを増やす営業活動さえ担ってもらえれば、継続してコンスタントな収益が得られる。しかもCO2フリーで、環境にも優しい。本当に良いことばかりです。
ローカルパートナーへの共感を「電気の切り替え」に
大澤:ローカルパートナーの皆さんは、それぞれが活動する地域の住民やコミュニティから感謝されて「ありがとう」と言われる有意義な活動をしているものの、共通してマネタイズへの課題を抱えていることが多いです。感謝や共感の気持ちを「電気の切り替え」という形で協力してもらえたら、ローカルパートナーだけでなく地域全体、つまり結果的にはユーザーのメリットとして還元されます。
家冨:多くの人が既にアクセスしているインフラに新たな選択肢を提示することで、より良い社会づくりに切り込んで行ける事業であり、無限の可能性がありますよね。
ローカルパートナーの皆さんは、領域は違えど現場で奮闘しながら在りたい未来のために挑戦している方達ばかり。勝手ながら同志だと感じていますし、「闇雲にサービスを売るためのマーケティング」のような手法ではなく、我々運営側とローカルパートナー、そしてユーザーの皆さんの意志の連鎖で推進できていることが心地良いなと感じます。
各地でそれぞれの課題解決に取り組むローカルパートナー
大澤:SOCIAL ENERGYを運営していく中で、印象的なパートナーや出来事について教えてください。
家冨:まず思いつくのは、我々にとって最初のローカルパートナーである、フィッシャーマン・ジャパンさんですね。目標として掲げている「若手を一人雇用できるくらいの収益」までにはまだまだ長い道のりがあるのですが、そこまでのスモールステップに楽しみを見出しながら、いつもユニークなアイデアを出してくれます。同じ目標に向かって、ともにポジティブに進んでいける関係性を構築できていることが嬉しいです。
大澤:私も、東京在住の方が「出身地である石巻の地域活性化を応援したい」という気持ちから、ふるさと納税のような感覚でフィッシャーマン電力に加入してくださった時はとても嬉しかったですね。ローカルパートナーの日々の活動あってこその結果だと思うので、敬意も感じます。
家冨さんは他にもいくつかの全国のローカルパートナーの拠点に直接足を運んでいますよね。
家冨:はい、これまでhaccoba電力やほたる電力など、いくつかの拠点に伺いました。haccoba電力の拠点である南相馬・小高地区を訪れた際には、東日本大震災による福島第一原発の事故で避難区域となった町に、10年の時を経て元の人口の1/3程である約3800人が街に戻られていることを知りました。今街に戻られている方たちは0からのスタートである事を受け入れて、能動的に地域に関わろうとしている方達だと思うんですよね。そういう場所で起こすhaccobaさんの事業に対する思いや、酒づくりを通じて問いかけたいメッセージ、そこから生まれるプロダクトの魅力など、現地に行かないとわからない空気を肌で感じることができ、とても貴重な経験でした。
大澤:サービスの運営を通じて、各地で地域の活性化や社会課題解決に真剣に取り組む多くのローカルパートナーと出会えたことは何者にも代え難い大きな財産だと感じています。残念ながら私はまだ各地にお邪魔できていないので、今年はぜひ全国行脚したいですね。
家冨:もう一つ、お魚大好き電気さんのお話を紹介させてください。代表の早川さんはお若くして現在、大分県にある道の駅かまえの駅長(リーダー)をされているのですが...とにかく魚が好きな青年なんです。面談の際にそのピュアな魚への愛がとてもとても伝わってきて、サービス名を「お魚大好き電気」にしたらいいのでは?と提案してしまいました。もうそれ以外の名前は浮かばず...。笑
そうしたら、それをまたそのまま受け入れてくださるという、もう全部がピュアなエピソード。色々なやり取りの中で早川さん自身が地域の方に愛されているんだなぁと感じることも多く、こういう方を支援できる仕組みってやっぱりいいな、と自画自賛もしました。サービスの1周年を記念したTwitterキャンペーンの時にも協賛を申し出てくださり、立派なブリを丸々1本ご提供いただきました。早川さんもまた、一緒に楽しみながらサービス普及に努めてくださるパートナーのお一人です。
変化が起きている時こそ、選択肢を見直すタイミング
大澤:Twitterでのキャンペーンは、多くの方に参加していただけましたね。
家冨:キャンペーンを通じて、少しでも多くの方に名前だけでも知っていただけたら...と思っていましたが、思った以上の反応がありました。参加してくださった方からはたくさんのフィードバックもいただけて嬉しかったです。今は電気料金の高騰を実感している方が多いと思いますが、大変な時こそどんな電気を選ぶのか考え直す良い機会になればと。私が岩手に移住したのも震災がきっかけでしたし。
大澤:確かにそうですね。料金高騰の話で言うと、SOCIAL ENERGYは安定供給を最も大事にしていて、相対電源からの固定価格での調達を基本としていることもあり、仕入金額の乱高下が少なく、現時点では比較的料金への影響を抑えられているのではないかと思います。インフラ事業者として必須である信頼感・安心感を大切にしているため、「24時間・365日対応のコールセンターを完備していること」「地震など有事の際の対応」への評価のコメントもいただいていますが、そういったサポート体制の面でも皆さんに安心していただけるサービスであり続けたいと思っています。家冨さんは、この1年を経てご自身の中での変化などありましたか?
家冨:正直、最近ようやくこの事業を楽しめる段階になったと感じています。右も左も分からない中ではじめて取り組む電力事業を必死に形にしてきましたが、蓋を開けてみると期待以上の反響がありました。地域を舞台に活動する方々にとって、期待感の高い仕組みなんだと思います。ユーザー・ローカルパートナー・運営メンバー・そして自分、関わる全ての人と目指す世界観を共有し、より良いサービスに成長させていきたいです。
大澤:現在家冨さんと私を含め主に7人のメンバーでSOCIAL ENERGYを運営していますが、毎週のオンラインミーティングやそこでの議論を通じて、サービスへの思い入れや運営メンバーとの関係も強くなってきていますね。事業を通じて課題を一緒に検討し解決していくプロセスや時間が、人間関係をより強固にしていくのだなと実感しています。最後に、これからSOCIAL ENEGYを通じて目指したい姿について教えてください。
家冨:社会構造として大きな資本力や政治が世の中を動かす事が多い一方で、私は個人の集合力も信じています。一人一人の力は小さいかもしれないけれど、それが集まる事で社会をより良くするパワーとなるはず。SOCIAL ENERGYがそれを体現する一つの方法になれたらいいですよね。
どうしたら「心地よい暮らし」実現できるか、だれもが考え実践できる社会に向けて、色んな場面で色んな人と学び合って対話していきたいです。葉山芸術祭での出展のように、エネルギーを身近に感じてもらえる機会も増やしていけたら。
大澤:確かに。人口減・税収減が課題となり「消滅可能性都市」と言われる地域が多数ある中で、それぞれの場所にある魅力的なカルチャー・人・地域資源など、たくさんの可能性を守ることに少しでも寄与できたらと思います。「地域の未来を灯す電力プラットフォーム」というキャッチコピーの通り、地域の未来に活力を与える存在を目指して、これからも各地のローカルパートナーと共に課題の解決に真摯に向き合っていきたいですね。