「百聞は一見に如かず」を合言葉に、全国津々浦々SOCIAL ENERGYローカルパートナーの現場を訪ね歩き、それぞれの取り組みを詳しくお届けしていくシリーズ「ローカルパートナー訪問記」。第3回となる今回訪れたのは【未来創造エナジー】です。
未来創造エナジーを運営しているのは、拠点を岐阜県郡上市に置く一般社団法人中濃地域内循環イニシアチブさん。代表の小森さんは経営実践研究会(以下、経実会)という経営者の会に加入しており、未来創造エナジーは経実会のバックアップのもと立ち上がりました。
小森さんは、民間の森林・林業の専門家として、日々活動している“森林総合監理士”の組織である「フォレスターズ合同会社」や、間伐材を利用した木製品や割り箸を製造販売する「株式会社 郡上割り箸」の代表も務めるなど、多彩な活動をされています。今回は未来創造エナジー運営の要でもある経実会を中心に、代表の小森さんの活動についてお話を伺いました。
服部:経実会というのはどういう団体なんでしょうか?
小森さん:全国の地域企業、中小企業のことを我々は地域企業と表現します、の経営者が集まる団体です。経営者の会って色々あるんですが、経実会は事業での社会課題解決を手段と捉え、社会変革を目的に活動しています。一定の成果を出すためには組織として活動していく必要があるため、組織づくりについても学んでいます。
そして「あなたは何のために働いているんですか」「あなたはなぜその事業をやっているんですか」ということから経営者が自分自身に問い直した上で、「今やっている事業は果たして20年後まで存在しているのか」「今の延長線上に未来はあるのか」ということを考えていく。これを私たちは「動機の再設定」と呼んでいるんですが、1人で考えていても答えが出ないことはみんなで考えようという感じですね。
服部:小森さんはさまざまな事業を手がけてらっしゃいますが、いつ頃からこうした事業を始めたのでしょうか。
小森さん:約20年前です。「日本の豊かな森林資源を守り続けたい」という気持ちから、郡上に移住しました。
服部:まさに小森さんが今取り組まれていることに直結する動機ですね。
小森さん:そうですね。フォレスターズ合同会社は、民間の森林・林業の専門家である“森林総合監理士(フォレスター)”の集まりで、地域に応じた適切な森林監理を行うために行政をサポートしています。それから、日本の森林資源を有効に活用していこうと生まれたのが郡上割り箸です。木を切ることは自然破壊と思われることもありますが、豊かな森林をつくるためには一度人が手を加えた場所は継続して手入れをし利活用していくことが必要です。どちらも森林を守ると同時に、循環型社会・持続可能な地域社会を実現したいという想いからやっていますね。
服部:その二つも未来創造エナジーも、根底で繋がっているんですね。
小森さん:そうですね、未来創造エナジーも地域内でお金が循環していないことに対する課題意識から立ち上げたので、通ずるところがあります。
服部:経実会では組織のあり方を考えていくということですが、目指す企業のあり方の具体的なイメージはあるんでしょうか?
小森さん:経実会に入ったら、「未来創造企業」を目指します。未来創造企業というのは一般社団法人日本未来企業研究所の認定制度です。「本業を通じて継続的に社会課題を解決し、その結果生まれる利益を適切に分配・再投資することで、より良い社会の実現と企業の持続的な発展を目指す企業」を掲げており、地域企業の新しい企業価値の創出に繋がっています。認定を受けることでPR面での支援を受けられたり、フォーラムや企業交流会に参加したりすることがメンバーのモチベーションになる側面もあります。
未来創造企業の認定を取るということは、必ずしも決算書の数字が良ければ良い企業というわけではないと考える姿勢や、企業の価値とは何なのかに向き合っていることを示し、また社会的価値と経済的価値を両立しているということ、多くの人の共感を得られる企業であることの証明となります。
服部:経実会が見据える、多くの企業が未来創造企業に変わっていった先のビジョンはどのようなものなんでしょうか?
小森さん:私たちは、まず自分たちの事業を通じて社会課題を解決していこうとしています。でもそれはあくまで手段で、解決することだけが目的なわけではありません。その先に金融資本主義ではなく共感資本主義に基づいた社会を本気で作っていこうとしています。
服部:まさにSOCIAL ENERGYでも大事にしている考え方です。未来創造エナジーは、経実会の中ではどのような位置付けなんですか?
小森さん:組織の社会インフラという感じでしょうか。今すでに全国で850社を超える企業が経実会に入っていますが、加入しているみなさんに切り替えてもらったらそこそこの経済インパクトがあるコミュニティ電力になりますよね。経実会に入ったらまず電力を切り替え、収益が実際に社会課題解決のために使われていると示すことができれば、私たちの思想を体現できるサービスになると思い、経実会の一つの活動として認めてもらいました。
服部:それだけのネットワークがあると、今後の広がりに期待できますね。
小森さん:メリットは何かという話ではなく、相手に与えて与えて与えた結果自分達にも巡ってくる、ということを大事にしているので、まずは電力の切り替えを検討してもらえたらと思いますね。林業や普段やっていることはこの先の社会のあり様に必要だろうと思ってやっているんですが、こういう経実会の考え方と一貫しているんです。
経実会の集まりでは、望ましい組織のあり方がどのようなものなのかというお話とともに、実践する中での悩みや苦労なども共有されていました。みなさんのエネルギッシュな姿勢や話しぶりを見ていて、本気で社会を良くしていこうという熱い想いを持って、まずは自分たちの組織から変えていこうと奮闘されている方々なんだなと感じました。
よりよい社会づくりに貢献したいという想いがあっても、最初の一歩をどうすればいいのかわからないということも多いと思います。そのような志を持つ経営者の方々の一歩目が経営実践研究会であるということが非常に分かった機会でした。経営者に限らず、社会を良くしたいと思いながら生活する人たちの踏み出す一歩目が「SOCIAL ENERGYに切り替えること」になるといいなと思います。
「ローカルパートナー訪問記」では、今後もSOCIAL ENERGYの中の人が各ローカルパートナーの元を訪れ、それぞれの活動の手触り感をお届けしていきます。
未来創造エナジーの詳細はこちらのプロジェクトページをご覧ください!