#004|芸術祭で発電!?SOCIAL ENERGYの自転車発電ワークショップ
2022年4月23日から5月15日にわたって、神奈川県の三浦半島に位置する葉山町で開催された「葉山芸術祭」。葉山町を中心に、近隣の市など複数の会場でさまざまなつくり手がアート作品の展示やマルシェの出店、ワークショップの開催をおこなったイベントに、わたしたちSOCIAL ENERGYも参加してきました。
今回SOCIAL ENERGYが行ったのは、いわゆる普通のママチャリの後輪に発電機をドッキングさせ、ペダルを漕ぐことによってモーターを回し、発生した電力でスピーカーや扇風機を稼働させる、という体験型ワークショップ。
なぜ、エネルギープラットフォームを運営する我々が芸術祭で発電を……?と思う方もいるかもしれませんが、これはおいおい説明するとして...
現場となった葉山ファクトリー「大人もみんなでつくる芸術祭」会場の様子。親子で楽しめる木工教室やマルシェ、歌と演劇のパフォーマンスなどが展開されるなかでドーンと鎮座したママチャリに皆さま興味しんしん。
今回、発電機の隣では草木染作家のAKARIさんによる草木・スパイスを揉んで色素を染め付け、エコバッグやハンカチをつくるワークショップが開催されており、濡れた布を乾かすのに扇風機の風を利用してみようという試みもありました。
「大変そう……」「いや、自転車なら普段漕いでるしいけるんじゃない?」いろんな声が聞こえてくるなか、いざ、ワークショップスタートです!
そよ風10秒で体力ゼロに!? 意外と大変だった自転車発電
まずは30代女性のお客さまが挑戦!
ガッとペダルに足を据え、思いっきり漕ぎ出してもらいます。ギュンギュンギュンギュンとうなるペダル&モーター! 普段、移動に使うぶんには道の傾斜や気分でスピードを加減できますが、発電となるとそうもいきません。全力で漕ぎ続けなければ継続した電力として家電に供給されないからです。
「ううう〜〜〜!!」
髪を振り乱しながら1分ほど漕いでもらいましたが、残念ながら電化製品はピクリとも動かず。限界近くまでペダルを回していても、簡単に電気には変換できないようです。
続いては30代男性。体力にはまあまあ自信アリとのことでしたが……。
「しんど!!ちょ……ちょ、どう!?スピーカー、動いてる!!?」
「うーん、聞こえない」
「マジで!?」
「一瞬聴こえたんだけど……」
漕いで漕いで、ようやくワンフレーズがボヨ〜〜ンと流れてきましたが、ちょっとでも漕ぐスピードが全速力から落ちると途端に音が止まってしまいます。消費電力が少ない扇風機にコンセントをつなぎ直して挑戦してみましたが、一瞬ふわっと風が起きてすぐ動かなくなりました。
最大級の回転を常にキープする必要がありそうです。
10代女性のお客様が思いっきり漕いで、ようやく扇風機から継続した風が出た時、思わず現場から歓声が……!
その後も性別・世代もさまざまな人たちが体力をフルに使って発電に、挑戦してくれましたが、結果は芳しくなく……。
コンセントに挿して何気なく得られる電力を人力で生み出そうとすると、予想以上に消費エネルギーが大きいことがわかりました。
もっと消費電力の小さいスマホの充電はどうなのかと挑戦してみたところ、成人男性が全力で2分ほど漕いで、ようやく1%充電ができるという結果に。
「自転車発電、興味あったんですよ!災害時にも自転車発電の仕組みとかあれば超安心じゃないですか!」と喜び勇んで挑戦したお客様もこの絶望の表情。
スマホのバッテリー1%なんてあっという間になくなるものですが、それを人力で生み出すことがこんなに大変だとは……。100%まで充電することを考えただけで、果てしない道のりにちょっとクラクラ。
ぜんぜん音もならないし、風も吹かないもんだから、さっさと飽きてキイチゴ摘みに夢中になる子どもたち。正直すぎる。
日々の電気は、資源を失うことによってつくられている
毎日の照明から、スマホやPC、エアコンも洗濯機も冷蔵庫も。日々の暮らしに電気は必要不可欠なものです。
電力会社に電話するだけで電気は使えるし、スイッチひとつ・コンセントひとつでその恩恵に預かれるため、普段使っている電気がどこでどのように生まれ、どんなルートを通ってやってくるか説明できる人はそう多くないのではないでしょうか。
経済産業省資源エネルギー庁によれば、2020年度の電力構成は下記の通りです。
電力を生み出すためには様々な方法がありますが日本は国全体で使用している電力の約8割を、石炭・石油・ガスなどを使った火力発電によってまかなっています。
火力発電は簡単に言うと下記のような仕組み。
石炭・石油・ガスなどで水を燃やした水蒸気でタービンを回転させ、電気をつくります。つまり、熱によって発生したエネルギーを電気に変えているのです。
学校の教科書にも記載があるように石炭・石油・ガスは天然資源であり、いずれ枯渇リスクもある資源です。
つまりいま、私たちが日々使っている電気の多くは、無限ではない貴重な資源を失いながら生み出されているということ。
ネガティブな意味ではなく目の前に横たわっている事実として、世の中にあるいろんなものは、何かを失うこと(=何かを使うこと)によって生み出されています。
水や土の栄養分を失うことによって野菜や穀物が生み出され、体力や気力を失うことによって仕事の報酬やアクティビティの思い出を得られるように。
電力供給の仕組み自体が非常に巨大なうえ、当たり前に日々の生活に密接しているため、何と引き換えに電気を得ているのかは普段なかなか見えてこないもの。
今回の自転車発電ワークショップは、莫大なエネルギーを消費することによって日々使用している電気がつくられていることを体感してもらいたい、という思いがありました。もちろん、SOCIAL ENERGYの電気は人力で生み出されているわけではありませんが、「体力」という消耗がわかりやすい資源を使うことで、その仕組みを体感して欲しかったのです。
失わざるを得ないのであれば、電気代が地域に還元される電力会社を選ぶのも選択肢のひとつ
電力自由化により、どこから電力を購入するかは選ぶことができる時代です。
大手の電力会社はもちろん、電気料金が安いから、スマホキャリアと提携しているから、使っているクレジットカードやポイントカードの得点が貯まるから……などなど、多くの人が、さまざまな理由で電力会社を選んでいます。
先述したように、電気は限りある資源とトレードオフで生み出されているもの。
ある程度失うことが避けられないのであれば、社会や環境に還元されるようなサービスを選ぶという選択肢もあることを知ってもらえたらと思います。
自分たちの電気代を地域をよりよくする活動に還元できる、SOCIAL ENERGYの仕組み
地域で使われている電気料金は、その地域で生み出されるお金の5~10%にのぼるにも関わらず、それらは全て地域外へ流出していると言われています。「SOCIAL ENERGY」は、地域のお金を地域内で循環させるためのエネルギープラットフォームです。
全国各地の 「地域のために活動するローカルパートナー」の理念に共感し、彼らのオリジナル電力プランに加入してもらうことで、収益の一部が地域活動のための原資として還元されます。
供給される電力は環境に優しいCO2フリー。(※CO2フリーではないプランもお選びいただけます)収益が地域のために還元され、魅力的な地域づくりに活用されることで、環境保全や地方の人口減・若年層の流出防止などの社会課題解決に寄与するだけでなく、脱炭素社会実現の一助にもなるサービスなのです。
「新電力に変えると、停電しやすくなったりしない?」と心配される方もいらっしゃいますが、電気はこれまでと同様の送配電網を使って届けられるので品質は変わりません。
さらに、システムや営業の効率化によりコストを大幅に抑えているので、地域の電力会社よりも安価に電気を使うことができるんです。
ふるさと納税のように、現在居住していなくても「何かしらの形で地元や思い入れのある地域を応援したい」という理由でお好きな電力プランを選ぶこともできます。
電気を生み出す仕組みを知ることで、未来へ向けたより良い選択のきっかけに
「そもそも電気がどうやって私たちのところに届いていたかなんて、ちゃんと考えたこともなかったけど……。パッと点くライトのありがたさを感じられました」
「人力で生み出すことがこんなに大変だと知れたからこそ、何も考えずに電気を消費してしまっている時間を少しでも減らせたらいいな」
「仕組みを知ることでいかにすごいものの恩恵を得ているのか理解できる。どこからこのエネルギーを得て、どこに還元できるのか考えるキッカケになりました」
かたやママチャリ、かたや巨大な炉とタービンなので仕組みとしての規模感は全く違うものの、参加者の皆さんからはたくさんのポジティブな感想をいただきました。
教育に携わる仕事をしているお客様からは「なぜ節電が必要なのか、子どもたちにはイメージしづらい。電気が生まれる仕組みを身体で理解できる体験が教育の場でも必要だなと思いました」といったコメントも。
環境や節約のために、電気を使わない!というのは多くの人にとって非現実的なこと。自分たちの快適な暮らしのためだけではなく、地域の活性につながる電気の使い方を改めて考えてみませんか。
(文:ヒラヤマヤスコ)